〒カワチ日手紙〒- 外 -

「あえて」以降の、生きる仕方の試みの記録。「父」像、「家族」像への試み。文中に出てくるCは妻で、五部林は息子です。

イクメンということば

●五月二日(木)

 ひどく発熱してるような感覚の目覚め。保育所に行くCと五部林を見送るのも、玄関まで這うようにして。
 それから、五部林のお迎えの時間までひたすら眠る。目覚めると、少しは回復していたけど、まだまだしんどく、フラフラしながら、保育所へ。
 迎えに行った五部林は、もちろん、そんなぼくの体調などお構いなし。そして、翌日から連休が始まるので、布団カバーを外したり、オムツを入れるバケツを洗ったり。帰りに、外島公園で遊ぶ。五部林は、お兄ちゃんたちがサッカーボールで遊んでいるのをずっと眺めていた。

 前日、定期購読している「母の友 2013年 06月号 [雑誌]」(福音館書店のページ)が届いた。特集は「脱『イクメン』宣言 父親の子育て」。
 これは、ぼくも発熱頭ではありながらも、すぐに読んで、パソコンを立ち上げる元気がなかったから、iPhoneから感想をfacebookとTwitterに投稿した。
 以下、転載。

「母の友」(2013年6月号)・特集「脱『イクメン』宣言」読了。

一昨年の夏に息子が生まれる前後、育児に積極的に関わりたいと思っていたとき、それから去年の夏に主夫になる前、ぼくがいちばん危惧していたのは、周囲の人から「イクメン」と見られるのではないか、ということでした。

ぼくは、いつだって、国家や広告会社のキャンペーンに対して、とりあえず「抗う」ことにしていますが、この「イクメン」に対してもそうで、多くの、ただ素直に我が子を愛する(父)親たちに届くこのことばには、少子化対策と女性労働力の引き上げ、そして少しでもこの父親育児市場の消費を促そうとする魂胆が見え見えだったからです。

ただ、ぼくは、我が子と少しでも長くいっしょにいたい、という欲の方が勝りました。
そして、出会う人、出会う人につねに「ぼくは『イクメン』ではないですよ」(現にぼくは見た目もイケてないし、育児も家事も面倒くさい。ただ息子が好きなだけです)と言い続けています。

今号の「母の友」の特集は、1999年「育児しない男を、父とは呼ばない」(厚労省少子化対策キャンペーン)、2006年「育児するいい男を、イクメンと呼ぼう」(博報堂社員融資が中心となった任意団体「イクメンクラブ」の意見広告)から始まる、「イクメン」キャンペーンに対し、疑問・再検証するもので、ぼくも読みながら、再確認しました。

イクメン」ということばは、各々の家族(生活)の在り方を考え直す「きっかけ」「スタートライン」であるにすぎず、それが「父親のあるべき姿」を規定するものではない、ということです。
その意味でいうと、ぼくは、父親になって1年10ヶ月、あるいは主夫になって数ヶ月間、「イクメン」には抗ってきたものの、「父親(主夫)のあるべき姿」(そんなものどこにもないのに)に規定されようとし続けて、しんどくなっていたようにも思います。

「育時連(男も女も育児時間を!連絡会)」の松田正樹さんの経験談(例えば、いかに子どもの世話をしたかを競うように報告し合う父親たちに向け、女性メンバーから「男たちよ、育児でも勝ちたいと思っているのか」と一刀両断された、とか)が、とても興味深かったです。

安倍首相の「育休3年」案にしても、憲法96条改正にしても、はたまた「イクメン」、「イクジイ」(これは少し趣向が違いますが)にしても、ことば面に惑わされることなく、本来の目的は何か、誰がぼく(たち)をどこへ連れて行こうとしているのか、それを見極める力が必要です。

 発熱頭で書いたわりには、わりとスッキリした文章(いや、むしろ、こっちの方が読みやすい文章か)。
 「イクメン」が、ただ単に「イクジ(育児)するメン(男)」の略称だけでないことに、ぼくは、やはり余計に男(父親)が育児に関われない壁、関わろうとする意欲を奪っていることを思う。「イクメン」ということばが登場した当初(二〇〇六年)なら、この単語は新鮮だったかもしれないが、むしろ、今では、いろいろな要素がそのことばにはくっついてきてしまっており、ぼくは、むしろ「イクメン」にならなくてもいい。子どもと関わることをが大切なのだから、と思う。いや、積極的に関わらないという選択があってもいい。かっこよく、手際よく、うまく、良い子育てをしなきゃいけない、そういうイメージが「イクメン」ということばには付いてくる。
 また、この特集のなかでは、全国亭主関白協会(真の『亭主関白』とは、妻をチヤホヤともてなし補佐する役目、という趣旨)の天野周一さんや、父親の育児参加について研究されている牧野カツコさん(著書に『子どもの発達と父親の役割』や『子育てに不安を感じる親たちへ―少子化家族のなかの育児不安 (MINERVA WOMEN’S LIBRARY)』など)などのインタビューもあり、「イクメン」キャンペーンや「イクメン」ブームと呼ばれるものの背景を考えさせてくれる、いい特集だった。
 福音館書店発行の雑誌にしては、当たり障りのない「イイ子ちゃん」企画ではなく、わりと思い切った企画なんじゃないかな。