〒カワチ日手紙〒- 外 -

「あえて」以降の、生きる仕方の試みの記録。「父」像、「家族」像への試み。文中に出てくるCは妻で、五部林は息子です。

喪の仕事

●四月二十六日(金)

 午前九時二十一分、LINEでIさんから「おはよう。/今朝五時に父が亡くなりました。」とメッセージが届く。
 いてもたってもいられず、Iさんに会いに東京に行くこと決意。Cにメールで伝える。Cも「行ってきてあげて」と返事をくれる。
 何からすれば良いのかわからなかったけど、とりあえず、連休前の週末ということもあって「新幹線、新幹線」と思い、愛車・リトルカブで守口市駅のJTBに。ただ、残念ながら、JTBでは、JRの当日券は販売しておらず、「JRのみどりの窓口へ行ってください」と言われ、JR京橋駅か放出駅か迷って、どちらが近いかをGoogleMapで調べたら、どちらも守口市駅からは5.2kmだったので、人の少なそうな放出駅へ向かう。
 放出駅の窓口は、改札横の小さな窓口一つで、「とにかく最終の東京行きの新幹線。乗車券は立川まで。大人一枚。明日は十九時前に大阪着のもので、往復お願いします」と言うと、やっぱり満席だったり色々あって、駅員さんが調べてくれてる途中に定期券買いに来たりする人もいて譲ったりして、なんとか購入できた。
 その後、放出駅そばの小さな喫茶店で、(元)T書店の人たちにfacebookやメールでお知らせ。ワタワタしながら。二時間ぐらい長居したので、明らかに店主のおばさんは嫌がっていた。帰りに、ローソンで香典袋購入。
 帰宅して、落ち着かない時間。やっとIさんとLINEでメッセージのやりとりができたり。午後、強い雨がザッーと。夕食の支度して、病み上がりの五部林のお迎えに行って、北斗町児童公園で少し遊んで、帰宅して、Iさんから電話がかかってきたので少し話して(五部林も電話口に出たんだけど、鼻息荒くさせただけ)、夕食食べさせて、洗濯物畳んでいたら、十九時すぎに早めにCが帰宅してくれる。
 二十時前、出発。新大阪駅には、二十一時前に着いて、何かIさんにお土産を、と思い「フエキくん 練乳ミルクプリン」を購入。「ALWAYS BE WITH YOU」が不易糊工業株式会社(フエキくん)のコンセプトだったから。
 二十一時二十分発の、のぞみ六四号(初めて二十七番線から)に乗車し、東京に。乗車中も、ずっとIさんや(元)T書店の人たちと、iPhoneでやりとり。あっという間の三時間。

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 二十三時四十五分、東京着。中央線に乗り換えて、立川へ。車内でやっと少し眠った。東京は寒くて、中央線車内も暖房が点いていた。立川に着いたのは、一時前だったろうか。とりあえず、ネットで予約したホテル(ホテルレックス立川)にチェックインし、Iさんに電話。「iPhoneで調べたら、ここからIさん家まで歩いて十五分ぐらいで着くみたいだから、歩いて行くよ」と。結局、それは「車で十五分」という意味だったようで、歩いたら、四、五十分かかった。Iさん家に着いたのは、二時前だったか。
 Iさん家の、まさに、お父さんが数日前、ホスピスに入るまでそこで眠っていたベッドのあるリビングで、Iさんとゆっくり話す。ぼくは、Iさんのお父さんの話を聞きながら、ぼくの亡き母のことを思い出していたように思う。二週間後の今も、そのとき、Iさんと話したことは、とても深く残っている。なんというか、もう四年も前に亡くなった母の「喪の仕事」のつづき、のようなものを、Iさんにさせてもらったように思う*1
 Iさんといっしょに、「フエキくん 練乳ミルクプリン」も食べて、夜が明けてきた五時前まで。この夜は、ものすごい満月だった。それから、タクシーを呼んでもらって、ホテルに帰って、眠った。

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●四月二十七日(土)

 十一時半に、国立駅で、Iさん、(元)T書店の人たちと待ち合わせしていたので、十時にチェックアウトしてから、西国分寺にあるBOOKS隆文堂に向かう。
 中央線と武蔵野線が交差する西国分寺駅構内からなかなか出られなくて困りつつ、駅ビルに入り、BOOKS隆文堂を見つける。(元)T書店のSくんもすぐに見つける。しばらく、Sくんと話して、Sくんオススメの本を購入。『
ユリイカ 2013年5月 特集=鬼束ちひろ』、『飛ぶ教室 第33号(2013年春)―児童文学の冒険 だから、絵本はおもしろい!』、『写真』、『自選 谷川俊太郎詩集 (岩波文庫)』。もちろん、「にしこくん」のブックカバーをしてもらう。
 その後は、時間まで西国分寺駅周辺をブラブラ。ブラブラといっても、ほとんど、線路を眺めてた。

ユリイカ 2013年5月 特集=鬼束ちひろ

ユリイカ 2013年5月 特集=鬼束ちひろ

写真

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自選 谷川俊太郎詩集 (岩波文庫)

自選 谷川俊太郎詩集 (岩波文庫)


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 国立駅には、最初Iさんが来て、その後、Nくん、そして、ものすごく久しぶりに会うYさん。BさんとMさんは「遅れる」との連絡があったので、連休初日で人々がごった返すなか、四人で「ロジーナ茶房」へ。
 すぐにBさんとMさんも来て六人になり、そんな昼間にこのメンツと会うことも(ましてや国立で)ないので、居心地の悪さを感じながらも、わいわいと料理を取り分けたり、楽しげに話す。でも、この集まりは、やっぱり、Iさんのお父さんが亡くなったことがきっかけなのだと、と、ときどき思って、ハッとしたり。
 その後、どうにも「(五部林と出かけているせいで)公園に行かないと落ち着かない身体」になっているぼくが「公園に行きたい」と提案し、一橋大学へ。
 構内で、これまた陽の光が似合わない六人で、話す。周囲には、親子連れ、子どもたちもいっぱい。サークルなのか、「逃亡中」とそっくりなサングラス&黒スーツの男が、若者を追い回していたりする光景を見ながら、芝生や、岩や、木の根元に座って、話す。

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 それから、Nくんは、ブックオフへ行き、その他五人は、匙屋さんに寄ったりして、十五時頃、解散。
 ぼくは、中央線に乗って、東京駅まで。
 十六時二十分発、のぞみ二三九号、新大阪行きに乗車。贅沢にも、ビール(プレミアムモルツ)、崎陽軒のシューマイ(行きの新幹線のなかが、ものすごくシューマイ臭が立ちこめていて、とても食べたかった)、そしてサラミ&チーズのおつまみを買って。行きは夜だったからまったく見えなかった富士山だけ見て、眠る。

 京都駅に着くまで眠っており、十八時五十三分、新大阪着。
 前回(去年12月末)、トーキョーに行って帰ってきたときとは、まるで違う気分だった。ほんとうのところは、また、トーキョー(東京)へ行き、(元)T書店の人たちと会うことで、ぼくの今の「日常」(の平坦さ)が照射されてしまい、「日常」が崩れてしまうのではないかと恐れていた。でも、大丈夫そうだった。
 帰りは、御堂筋線に乗る。大学時代の友人とともに、五部林と播磨中央公園に出かけているはずだったCにメールしてみると、ふたりもまだ帰宅していないようだったので、そのまま、ぼくは、二十時からのマンションの管理組合の理事会に出席することに。
 二十一時すぎ、理事会終了。帰宅すると、Cと五部林は、もう眠っていた。

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 Iさんにとって、お父さんが亡くなったばかりの夜、そして翌日に、迷惑ではなかったか、そんなことは何回も考えて、何回も行くのをやめようかと思ったけど、やっぱり、行って良かったんじゃないか、少しはIさんの「心の整理」みたいなものの、きっかけづくりの役には立てたんじゃないか、そんなことを自負しながら眠った。
 でも、不思議だ、Iさんは、家族でも、恋人でも、親戚でもなく、古本屋のバイト仲間だった友人なのに。
 そして、みんなも集まることも、不思議。みんなにとっても、Iさんは家族でも、恋人でも、親戚でもなく、古本屋のバイト仲間だった友人なはず。
 この旅では、Aくんと会えなかったことが残念だった。「佐野元春のザ・ソングライターズ」、中村(一義)くんの回、DVDに焼いて、持って行ってたのに。

*1:あと、忘れられないのは、「在宅」と筆文字でデカデカと書かれた冊子。どこかの在宅医療をしている診療所の、じぶんの病院が掲載された新聞記事とかが「これでもか」と掲載されている冊子