〒カワチ日手紙〒- 外 -

「あえて」以降の、生きる仕方の試みの記録。「父」像、「家族」像への試み。文中に出てくるCは妻で、五部林は息子です。

そうだ、ぼくは、やりたいのだ、やります。

 ここ最近は、イベントに参加したり、映画を観たり、本を読んだりすると、なるべくその当日中に感想というか、メモのようなものを書いている。
 それは、何も「早さ」を求めているとかいうわけじゃなくて、最近は、いろんなことを忘れやすくなったし、何より、日が経つほどいろんなことが面倒くさくなって、いろんなことがどんどん後回しになってしまうじぶんの性格が(やっと)わかり始めたからだ。
 ただ、例外のイベントが、七月十九日に参加した「『本屋図鑑』ができるまで」@隆祥館書店の、夏葉社・島田潤一郎さんと空犬さんのトークイベントで、この日は、イベント後に、隆祥館書店の近くのお店で、「とりさん」という、ずっと会いたかった方と呑んで、その後、さらに西中島南方の居酒屋で島田さんと遅くまで呑んでおり、物理的に当日中に感想を書くことが無理だった、ということもあるけど、きちんと『本屋図鑑』を読み終えてから、感想を書きたいと思っていた、その二つの理由があって、きょうまで書けなかった。
 ただ、実は、今、これを書き始めたということは、『本屋図鑑』を読み終えた、ということではなくて、まだ半分ぐらいしか読んでいない。ただ、半分ぐらい読んでみたところで、この本は、「図鑑」なのだから、ざーっと前から順番に読み勧めるという読み方ではなく、つねに枕のそばに置いておいて、ふとしたときに(どこからでも)ページを開くという読み方の方が合っているのではないかと思い始めた。

本屋図鑑

本屋図鑑

 イベントの様子は、空犬さんの「空犬通信*1」などで紹介されているので、ここではあまり触れないけれど、ぼくが当日の島田さんと空犬さんのお話のなかで印象に残っているのは、『本屋図鑑』の企画が立ち上がったとき、どのような本のテイストにしたかったかという話題のなかで、島田さんが「福音館書店から出ている、さとうち藍・文/松岡達英・絵『冒険図鑑』だった」とお話されていたことで、ぼくもこの「福音館のDO!図鑑シリーズ」(福音館書店らしからぬシリーズ名だと思う)は、以前から、大好きな本だったので、まだ実際に『本屋図鑑』を読む前だったけれど、それだけで、ワクワクしてきたのだった。
 イベントでは、実際に、島田さんが日本中の「本屋さん」のうち、取材した何軒かの写真をスライドで見せてもらいながら、どんどん話は尽きないなか、ぼくが印象に残ったのは、


(一)ロバの本屋山口県長門市
(二)木城えほんの郷 森のほんやさん(宮崎県・児湯郡
(三)定有堂書店鳥取県鳥取市
(四)菊屋書店長崎県五島市

 だった。
 (一)ロバの本屋は、その立地。誰も気づかない、島田さん曰く「その店を目指して行っても通り過ぎてしまう」というすばらしさ(?)。(二)森のほんやさんは、「まごまごクラブ・ここクラブ*2」という試み。おじいちゃん・おばあちゃんが孫に絵本をプレゼントする手助けをするというすばらしさ。そして、武者小路実篤が開村した「新しき村」のすぐそばにある山間地*3で絵本専門店を持続していくという挑戦。(三)定有堂書店は、店内に何やらいろんなものがぶら下がっている不可思議さ、店主から説明されると「そのときはわかるのだけど、誰かに決して説明できるものではない」店内のコンセプト。
 そして、(四)菊屋書店。
 実は、この書店が、ぼくはいちばん訪れてみたくなったのだけど、離島の何気ない、ふつうの「本屋さん」。取材しようと、島田さんが電話したときに「夏葉社」という社名はもちろん、「ピース又吉で有名になった」と言ってもわかってもらえない、取材されること=怪しい、と思うおばあちゃんが店番をしてる、その正当さ、というか、清さ、というか、それに、ぼくはとても感動した。ホームページなんて、もちろん開設していないし、この先もきっと開設する必要性もない島民の人の日常にある「本屋さん」なのだろうと思う。

 ぼくは、このイベントで紹介された(書店ではなく「本屋さん」という言い方がぴったりくる)「本屋さん」、そして『本屋図鑑』に紹介されている「本屋さん」に、「勇気」みたいなものをもらって、島田さんや空犬さんはもちろん、大阪はもちろん、全国から多くの書店・出版関係者さんが訪れていた*4このイベント内で、最後の質疑応答の時間に、「お客の側から見た『本屋さん』についてはほんとうにいろんな楽しみ方、訪れ方がありますが、島田さんや空犬さんのように出版社側・本の作り手、売り手側からみた『本屋さん』というのは、どのような場所ですか?」という質問とともに、「実は、ぼくはいろんな人から無謀だと言われ、やめろと言われ続けているのですが、大阪・守口市という場所で、新しく『本屋さん』を始めたいと思っています。ここ数年後には始めたいと思っていて、まだ何も準備はしていないのですが、店名だけは決めているのです、『たられば書店』です。開店したら『本屋図鑑2』に載せてもらえるような『本屋さん』にしたいと思っているので、みなさんどうぞ遊びに来てください」なんてことを、恥ずかしげもなく(いや、ほんとうは、相当恥ずかしかったけど)、言ってしまったのだった。
 イベント終了後、隆祥館書店の店内で、店番をしていたおじいちゃん(店主・二村知子さんのお父さんかな?)とお話ししていると、イベントに参加してくださっていた方数人から「『たられば書店』、がんばってください」「遊びに行きますよ」と声をかけていただいたことがとてもうれしかった。
 その後、二次会の終盤にお邪魔したお店では、大好きな本屋さん・ハセショ(長谷川書店大阪府三島郡島本町)のMさんからも「○○さんが、やりたいんでしょ、誰に何を言われても、やればいいんですよ」と、日頃、温厚なMさんらしからぬ、強い口調で、でも、だからこそ、とても心に響いて、涙が出そうになった。

 西中島南方の小さな居酒屋で島田さんとお話しさせてもらって、帰宅した午前二時すぎに、ぼくは、こんなことをfacebookに投稿している。

本は、やはり、人を結びつける。
結びつけたくなくても、結びつく。
道具ではない、『思い』というか、『その結晶』なのだと、再確認。
やりますよ、やります。
〈タラレバ書店〉、ぼくがつくる本屋の名前。
https://www.facebook.com/subekaraku/posts/498155576925720

 そうだ、ぼくは、やりたいのだ、やります。

*1:http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/blog-entry-2093.html

*2:http://service.kijo.jp/~ehon/magokoko.files/magokoko.htm

*3:参照:Google map(3D)→http://ow.ly/nIpQ1

*4:海外・ブラジルから参加されていた方もいた。んでもって、なんと、作家・津村記久子さんもいたことを後から教えてもらった